10枚目にして

新作版画「逆さ富士」において木格子の影の部分が気になってしまい、影の部分のみ新たに彫り直した後、何回かの摺り作業を行うも、肝心の影のズレが出たり絵の具を落としてしまったりで、中々満足する摺りとならなかった。

残り一枚の和紙を昨晩から湿しておき、これが最後との想いで朝から摺り始めた。

薄黒色を影の部分の版木にぬった後、和紙を載せてバレンで柔らかく摺りあげ、神に祈る気持ちで和紙を版木から静かに剥がしてみると、10枚目にしてやっと満足のいく出来上がりとなった。

思わずヤッタ!と声が出てしまった。

前面の池も感じも前回より旨く表す事が出来たと思う。