印刻法

今回の新作版画では印刻法を採用する事にして版木の彫りを進めてきた。


この印刻法は、凹版画とも言われているが、
通常の凸版画に比べて黒の原版彫りが短時間で済むと言う利点がある反面、
多色刷りの場合色出しが難しいと言う難点もある。


これは無地の版木の上に黒を摺り上げ、この上に他の色を重ねていき、
下地の黒を他の色の隙間から浮き出す方法であり、
上手く摺れると深みある重厚感が得られるのである。


昨日から始めた試し摺りを終え、今朝から和紙を用いて本格的な摺りに入ったのだが
原版が黒地だけに、その上に重ねるレンガ色などが中々色着いてくれないのである。


レンガ色だけでも10回程度重ね摺りをしたが、どうしても下地の黒が出て来てしまう。


下地の黒を薄くしてみたが、これでは浮き出て来る黒に迫力が出ない。


どうも黒地にレンガ色は吸収してしまうようだ。


仕方がないので印刻法での作品創りは諦めて、折角彫った他の版木を活かすべく
凸版画に変更する事にし、明日から黒の原版を彫り直す事にした。